• 自己最高の全国大会準優勝の成績を残した長谷部=水戸桜ノ牧高常北校で(澤田遥香撮影)

  • チームメイトの応援を受け、リングに向かう長谷部(田上佳雅撮影)

  • 対戦相手の重岡も長谷部の成長は認めた(増田昇悟撮影)

  • 表彰式では総監督であり茨城県連盟会長の中島氏が表彰を行った(田上佳雅撮影)

  • 決勝当日にはWBAバンタム級世界王者の井上尚弥氏が中継番組の解説を務めた

全日本選手権最終日 駒大勢は入賞者3人で大会終える

[ボクシング部]第88回全日本ボクシング選手権大会(2018年11月21日 00時00分)

 11月14日より第88回全日本ボクシング選手権が開催されており、駒大からはOB3人を含む11人が出場している。大会最終日となる18日には決勝が行われ、ライトフライ級とフライ級でそれぞれ準優勝となった。結果は以下の通り。

【ライトフライ級】
●長谷部大地(経2) WP0-5(1R0-5,2R0-5,3R0-5)重岡優大(拓大)○
→準優勝

【フライ級】
●田中亮明(16年卒) WP1-4(1R2-3,2R1-4,3R1-4)柏崎刀翔(自体校)○
→準優勝

日本中のボクサーが憧れる頂点。決勝の日の初戦、ライトフライ級の長谷部に立ちはだかったのは、拓大の重岡。今年の福井国体でも対戦し、お互いに手の内が分かった状態で臨んだ。初めて全国大会の決勝の舞台に立った長谷部はリーチの長さを生かし、アウトボクシングを徹底する。対する重岡選手は少しでも自分の距離に入ってくると鋭いジャブからの左フックで有効打の数において長谷部を凌駕する。
1Rでは長谷部の奮闘もあり、互角に戦うが、2R3Rと時間が経つにつれ、攻め手の引き出しが多い相手が試合を支配するようになる。お互いがフラフラになった3Rでも、相手は着実にパンチを当ててくる。結果は0-5の判定負け。スコアからすると国体の結果と同じだが、着実に差は縮まっている。これはチャンプとなった重岡も認めた。長谷部自身も「次に対戦する時には勝てているビジョンがある」と前向きに捉えている。
来年5月にリーグ戦を向かえる長谷部にとって、同じ1部に所属する拓大の重岡との対戦は避けて通れない。その全日本チャンプへの挑戦権を獲得するためには、リーグ戦のレギュラー争いが待っている。同じ階級の杉山広将(営3)との部内競争だ。これについてはライトフライ級全日本3連覇の実績を持つ林田コーチも「お互いに切磋琢磨してほしい」と背中を押す言葉をかけた。
フライ級の決勝の舞台に立ったOBの田中は先日行われたアジア大会など、日本代表としてのキャリアも長い。国際大会の経験が豊富な田中は国際的に評価されるパンチの質にこだわって試合運びをし、ここぞというタイミングで狙いを澄まし有効打を重ねる。有効打の面で相手に勝っていたが、積極性の面で相手選手に軍配が上がり、これが結果的に重視され優勝とはならなかった。

◆中島成雄総監督
「(決勝に二人残ったが)それは当たり前のことだと思うが、残念なのは優勝候補だったライト級の嶋田。連盟も非常に期待している選手なので、今後もオリンピックを目指して頑張ってもらいたい。同じ階級の一年生の完山はまた頑張れば良いし。OBの田中亮明に関しては、実力があるのでまだまだオリンピックを狙える力が十分にあると思うし、決勝のあの試合だって負けたと思ってない。みんな頑張ってもらいたい。(今後のチームに向けて)うちの大学の関係者には東京オリンピックの出場に向けて頑張ってほしい。私はその為のサポートをしていきたい」

◆石原英康(98年卒、中京学院大中京高ボクシング部監督)
「(長谷部選手の試合を見ていて)決勝の日は次のフライ級の田中亮明の試合の準備があったのでよく見てはいないが、すごく積極的に打っていたし、リーチも長いから意外と良い勝負になったなという印象。もうちょっと差があるかなと思っていたが。(田中亮明選手の敗因は)日本と海外のジャッジの見方の違いでしょうね。試合自体はコントロールしてたと思うし、クリーンヒットの数では勝っていたと思う。海外ではクオリティーヒットの数を見るが、日本では前に出て積極的だった選手が評価される。敗因として強いて言うならばパンチを出せば当たるのだから積極性が足りなかったのかなと。(リーグ戦に向けて)まだまだ上位に食い込めていないところがある。個人でこれだけの活躍をしているということは力があるということなので、一人一人が誇りを持って積極的なボクシングをすればそのうち1部でAクラスに入ることができ、やがて日本一のチームになれる。そうなってほしいとOBの一人として期待しています」

◆林田太郎コーチ(2008~10年度全日本選手権ライトフライ級王者)
「(今大会、長谷部選手に一貫していたものは)自分の距離でボクシングができるようになってきたところだと思います。そして練習でできていたことをこれまではできていなかったが、できるようになった。これは日々の練習の積み重ねの結果でしょう。練習から意識してやれていたし、メンタル面でも強くなれた。ただがむしゃらにいくだけではなくて、冷静に試合運びをできるようになれた。(準決勝の壁を破れた理由は)やはり自分の長所を出せたところだと思う。その一言に尽きる。(全日本ライトフライ級3連覇の立場からは)もちろん優勝は誰もが目指すものだが、それを成し遂げるためには、一戦一戦を大事に戦わなければいけない。一戦一戦『今日も勝った』っていったら気づけば決勝にいる、みたいな。決勝までいくのに1回戦と2回戦は手を抜きました、というわけではない。一戦一戦が勝負なので。連戦するには体力も必要だし、けがもしないようにしなくてはいけないし、私の時代と変わってヘッドギアは無いから雑にいけば頭をカットしてしまうし。それを全て統合してトーナメントを制するのは難しいことだと思うので、そこを日々の練習からやらなければいけない。(軽量級の選手が結果を残したのは来季のリーグ戦にも好材料では)その通り。長谷部は来年のリーグ戦に向けてかなり自信になったと思うので、期待したい。同門に杉山がいて、彼もかなり強いのでお互いで切磋琢磨していってほしい。今回、長谷部が結果を残したからといって来年のリーグ戦のレギュラーが確約されたわけではないので。チーム内で競って頑張ってもらいたい」

◆長谷部大地
「(準優勝という結果をどう捉えているか)今まで3位に3度なっていて、その壁をなかなか破ることができなかったが、今回初めて全国大会の決勝の舞台に立てて嬉しかった。優勝まであと一勝だったからこそ悔しいが、決勝の舞台に立てたことはすごく嬉しかった。(大会でのテーマを下剋上と話していたが、いつから意識し始めたのか)全日本選手権への出場が決まった時から。組み合わせが発表されて、松本流星選手とか重岡選手が日連推薦で出場が確定したのが分かって、過去に負けた相手で、自分が上に上がっていく過程でそういった相手に勝たないと上がれないので。(1年前の全日本選手権の準々決勝では松本流星選手を前に棄権。悔しさなどは)試合をせずに棄権をしたのはあの時が初めてだった。負けるつもりは無かったので、あの時は自分自身に苛立ちや悔しさが募った。出場するために練習や対策をしてきた相手にも申し訳ないと思った。試合する気持ちを作ってきたのに、相手が棄権してきたらすごい嫌な思いをすると思うので。今回の全日本では似たようなことはできないので、手洗いうがいとか、移動中のマスクや人混みには近づかないようにするだとか、結膜炎予防の為に目を洗ったりした。(決勝の日、起きてからは何をしたか)あの日は緊張があったが、決勝の舞台に立てることに感謝して、せっかくここまで来たから楽しもうと思った。国体と違ってNHKの中継もあったので、雰囲気を味わいながら朝を過ごした。リングに上がる前は結構リラックスできていて、上がるその時にはきちんと気持ちができていたので特に焦りもなく、何かを考えていたというよりは、『練習したことをやろう』とイメージトレーニングをしていた。(監督などからの指示は)僕はサウスポーの選手が得意ではないが、対策をきちんとしてきていて、準決勝の松本選手と戦った時に良い形で出たので、その形で突き通して準決勝のボクシングをすれば勝てると意識して決勝では戦った。(前に出過ぎてしまうのが欠点だと監督が言っていたが)僕は手が長いところが武器だが、短所として戦っている時に焦ったりとか、考える余裕が無くなって突っ込んでしまうところがあって、冷静さを無くすところがあった。そういうことをしないために、ボクシングの基礎である、ジャブを突いて相手との距離感を取るなど、簡単なことしか練習していないが、それが今回の結果につながった。(対戦後、相手の重岡選手は技術面などで大差は無かったと話していたが)でもやはり向こうの方が技量はあると思う。スタミナは変わらないと思うが、僕はこれまでの3回の対戦を振り返ると差が縮まっている実感があった。このペースでいくと僕は次には勝てるビジョンが描けている。向こうが得意とする後ろのパンチとかも今回は悩まされたが、それに対しての対策をすれば、今はまだ劣っているが勝てる相手だと思う。次に対戦するであろうリーグ戦までは時間が空くのでそこまでには仕上げたい。(各ラウンドを振り返って)1Rと2Rは結果としてはフルマークで負けてしまったが、ポイントが入っても良いかなというものだった。僕の中での強い選手のイメージは1Rを取られても、その後のラウンドでボクシングを変えてきたりして、修正力があって対策できる。弱い選手というのは1Rから3Rまで同じボクシングを続ける。(大会後に家族やチームメイトからどう声をかけられたか)家族は岡山から来てくれるので、すごく遠いし全国大会の度に来てくれているので、大会ではどこか良いところを見せるというよりは恩返しをするつもりで、来てくれていることに見合っただけの試合ができたらと思っている。今回は負けてしまったが、これに近いボクシングができたかなと思っている。仲間には前日の夜に励ましてもらったりして、当日も細かいサポートをしてもらって、試合をするのは一人だけど、戦うのは皆で、自分一人ではできないなとすごく実感した。(表彰式ではOBの田中亮明選手と隣同士並んだが) 田中亮明さんとか同じ岡山の藤田健児さんとか閉会式全体を見ても何度もこの大会を優勝した選手とか日本代表などのトップクラスの選手ばかりで、緊張はしたけど同じ舞台に立てていることが嬉しくてすごく気持ち良かった。(リーグ戦の出場には杉山選手との対決が待っていると思うが)杉山さんには大会が終わってからまだ会っていないが、きっと今回の結果を見て、より練習に力を入れてくると思うし、すごく強いのでその杉山さんに頑張って勝ちたい。リーグ戦ではお互いが競い合うから強くなれる。僕は初戦から全部出場する気でいるが、杉山さんも必ず同じ気持ちでくると思うので、そこで負けないように頑張りたい。技術面では、技術をもっと覚えること。今の自分がやっていることはジャブからのワンツーで初歩的なことなので、足の使い方とか相手の動きに対しての動き方とかコンビネーションだとかもう一つ上のランクの技術的なことをきちんとしていきたい。僕のリーチの長さといった武器を生かしながら引き出しを増やしたい」

◆重岡優大(拓大)
「(長谷部選手の印象は)長谷部君とは今年で2回目か3回目の対戦で、この前の国体でも戦った相手なのでお互いに手の内は分かっていた。こういう大舞台だから向こうも国体の時よりもさらに気持ちの強さや気合いの強まりがあり、前より強くなっていた。ああいう気持ちが強い年下の選手が一番厄介だった。『食ってやる』『やってやる』という気持ちがあって。しかも年下で『負けても良いから』ぐらいの勢いでやってきたなと。(勝因は)技術などの面はそんな大差無いと思った。でも年が離れているから、そういう経験の差だけかもしれない。試合後のテレビのインタビューでも言ったが、向こうは勝ちを第一にしてくる。こっちは楽しむことを第一に考えている。勝ちに拘りすぎて自分のスタイルを見失ったり、やらなきゃいけないことを見失ったりするくらいなら、全部楽しんでボクシングをやりたいので。ボクシングをあの舞台で楽しくやれるっていうことが結局勝ちにつながると思ったので。こういう心の余裕が自分の方があったんじゃないかなと」

◆齊藤陽二(17年卒、角海老宝石ジム所属)
「(後輩の試合を見て)12月1日に試合があるので、それに向けた良いモチベーションになった。(長谷部選手の試合を見ていて)長谷部はちょっと緊張していた感じがあった。もう少し思い切っていったら面白い試合になっていたのかなと。(来年のリーグ戦に向けてメッセージを)キャプテンの嶋田はしっかりしていて強く、ちゃんと引っ張っていってくれるので、皆がそれについていけば良い結果は出てくると思う」

◎掲載が遅れましたことをお詫び申し上げます。

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