覚悟をもったチームが13年ぶり7度目の頂点に ~箱根駅伝優勝インタビュー vol.4~

[陸上競技部](2021年01月22日 19時08分)

第97回東京箱根間往復大学駅伝競走が1月2、3日、大手町~芦ノ湖~大手町の10 区間、217.1kmで行われた。新型コロナウイルスの影響で例年とは異なる大会形式となったが駒大陸上部は13年ぶり7度目の優勝。全日本大学駅伝を合わせて2冠を果たした。
最終回は花崎悠紀(市3)選手、佃康平(法3)選手、石川拓慎(現3)選手へのインタビューを掲載する。


◆6区・花崎悠紀
―優勝後、地元の富山でどのような声を掛けられたか
「中学校や高校に顔を出した際、先生や後輩に祝福の声を掛けられた」
―10区の石川選手がラスト2㎞で逆転したときどう思ったか
「1位との差が3分以上あって、その時点でもうダメかなと思ったが、逆転をして驚きと嬉しさが入り混じってなんとも言えない気持ちだった」
―全日本では3年生が一人も出走することができなかったが
「個人個人が悔しかったと思うので、箱根こそはという気持ちはみんな持っていたと思う」
―当日の調子は
「みんなの前では良いと言っていたが、自分の中のコンディション的には100%ではなかったので、そのなかで自分のできることはできたかと思う」
―当日のレースプランは
「積極的かつ余裕をもった走りというものを心掛けていた。最初の上りはかなり余裕をもって入って、後半どれだけタイムを稼げるかという走りをした」
―レース前に監督からどのような指示があったか
「あまり速く入りすぎてもいけないが、それでも攻めた走りをしなければならないといったことを言われた。タイムに関しての指示はなかった」
―入学時から山の区間を希望していたが、今回6区の準備をしていたのか
「6区に向けた練習というものはしたことがなくて、みんなと同じような練習をしていた。強いていえば練習の強度を少し変えてもらうくらいで、特に下りの練習等はしていなかった」
―自身のレースを振り返って
「一番きつかったのは、13㎞辺りの下りの傾斜が緩やかになるポイント。そこでタイムを落とす選手が多いので、そこでほかの人と差をつけられると思っていて、苦しかったが必死に走った」
―監督からかけられた言葉で印象に残っているものは
「『57分台が出る』といわれたこと。ポイントごとの設定タイムがあったが、自分の設定タイムと全然合っていなくて、これはあてにならないと思って時計を見ないようにしていた。その後、監督車と合流した際にその旨を告げられて驚いたので印象に残っている」
―タフな6区を走り終えて、疲労などは
「ほとんどなく、次の日も走っていた。富山に帰省後も高校生と一緒にジョグもしたりしていて、特に大きなダメージなどはなかった」
―ダメージが少なかったのはなぜだと思うか
「フォームが安定しているからだと思う」
―フォームをよくするために日頃気をつけている点は
「集中するために、基本的に一人でジョグをしている。今年一年はほとんど一人で走っていた」
―優勝に3年生が大きく貢献したと思うが
「3年生は谷間の世代と言われていて、実力があまりない中で入学してきて、ここまでやってきた。その中で3人の3年生が走れるかもしれないという雰囲気になった時に、周りの評価をあまり気にしない自分たちではあるが、自分たちがやることをして力を見せて、周りのこれまでの評価を払しょくしたいということは、みんな考えていたと思う」
―どの時期から3年生3人が走れると感じたか
「直前まで本当に分からなくて。何も言われていなかったので。自分たちに言われたのも3日前くらい。だが自分は練習メニューが違っていたので、走るのではないかと感じていた」
―箱根直前に3年生3人の調子が上がったのか
「箱根を走った3人だけでなく大西峻平(経3)なども、もともと合宿等で1年生よりも練習をこなせていて、練習での存在感を示せていた。調子が良くなっていたというものもあるが、実力的には変わらなかったと思う」
―後輩の田澤が主将に選ばれたが
「自分たちの学年から代表が選ばれないということは受け止めなければいけないことだと思う。その分後輩に負担をかけてしまっていると感じている。ただ、それが今のチームにとって最善の選択ならそれが正しいと思うし、そうなってしまったので、自分がチームにとって何ができるかということを考えて、この一年チームのためにやっていきたい」
―今後の目標は
「次の目標は来年の箱根6区を走ること。慢心せずに自分をもう一度見つめ直して、一から練習を積み重ねていきたい。その結果、また来年6区を走らせていただく機会をいただければ、チームに貢献できるような走りをしたい」


◆8区・佃康平
―改めて、優勝して
「チームの目標としては3位以内だったが、選手全員が優勝を視野に入れていたので、最後まで諦めずに前を追えたことで優勝という結果が付いてきたのだと思う」
―全日本では3年生から出走した選手がいなかったが、箱根に向けて3年生で話し合ったことは
「全日本では4人くらいエントリーされて誰も走れなかった。ミーティングがその後にあって、3年生がいないと勝てないぞというチーム状況にしていかないと、という話は出ていた。だから今回エントリーされて3人走って、3人とも結果を残せたので、自分たち3年生としては嬉しい」
―同じ3年生の花崎選手が6区で区間賞を獲得したが
「最初から良いペースで走っていて、花崎がしっかり3年生を勢いづけようとしてくれている意思が伝わった。結果的に花崎は区間賞で、花尾もしっかりつないでくれて、自分がここで、優勝が見える位置でブレーキしたら後ろの2人に申し訳なかったので、しっかりと前との差を詰められてよかった」
―当日の調子は
「結構よかった。12月に入ってきてから調子も上がってきていて、そのまま当日を迎えることができたので、何の不安もなく走ることができた」
―レースプランは
「最初は平地なので、最初で速いペースでリズムに乗って、後半残り5㎞の遊行寺の坂から前の選手も疲れてくると思うのでそこで差を詰めようと思ったが、自分の残り5㎞でなかなか登り切れずに終わってしまったので、それは来年の課題としてしっかり向き合っていきたい」
―運営管理車の監督からどのような声をかけられたか
「最初はどんどん突っ込めと言われた。10㎞過ぎくらいからは、体がしっかり動いているから、今までで一番動いているから自信を持っていけと言われて、自分でも自信を持てた。後半は山野(力・市2)に少しでも楽をさせてあげるぞと言われて、後半もそこまで落ちずにいけた」
―終始単独走で、前を追う展開になったが
「最初は全然前も見えなくて1人だったが、だんだん後半から、直進になれば前の創価大がぎりぎり見えるくらいだったので、少しずつ追いついているんだなという実感があったので、そこで心が折れずにしっかり前を追うことができた」
―元々山登り希望だったというが、遊行寺の上り坂は意識していたか
「5区の登りに比べたら距離的にも傾斜的にもないが、5区を意識しながら最初から走っていくことができたので、後半もきつすぎることはなかったのでよかった」
―今回3年生が大きく優勝に貢献したと思うが
「 1年生のころからきついことを先輩方や監督からも言われていて、いつか全員で見返してやろうという話はミーティングでもあった。そのなかでこの3年目で結果を出せて、他の3年生にもやればできることを証明できたし、自分たち3人はもっと、最上級生にもなるので、もっともっと高みを目指してチームを引っ張っていけると思う」
―8区区間4位、8区駒大タイ記録となったが
「そこは絶対に記録を更新したいと思っていた。更新まではいかなかったが、タイ記録ということで、来年また8区を走らせてもらえるなら、その記録は抜きたいなと思う」
―1つ下の田澤選手が新主将となったが
「本当に力があって、練習でも引っ張るなどしてくれたので全然そこに異論はなくて、しっかりやってくれればと思う。ただ4年生がサポートできるようにしていかないとと思う」
―ついに最終学年となるが、今後の意気込みは
「4年生になったら自分のことだけではなくてチーム全体のことや、下級生のこともサポートしながら自分のこともやらないといけない。今までとは立場も違ってくると思うので、4年生全員で、今年のチームよりも上を目指すチームでありたいなと思っている」


◆10区・石川拓慎
―改めて、優勝して心境は
「自分は優勝を大きな大会でしたことがなかったので、今回こういう経験ができたりとか、区間賞を取れたりとか、次に繋がる大会でもあったなと思う」
―翌日の4日朝からたくさんテレビに生出演したが、感想は
「その場で、監督はこんなことを思っていたのかとか、みんなこんな風に考えていたのかとか、おもしろい、楽しい瞬間だった」
―全日本で3年生から出走した選手はいなかったが、箱根に向けて3年生で話したことは
「3年生でもしかしたら走るかもしれないという人が自分だけで、力の無さだったりとか、まだまだ信頼度だったり、監督の視野に入っていなかったりしたので、そこに食い込むためにも練習でのアピールや、記録会でもタイムを出さないといけないと話をした。箱根には自分1人ではなく2人3人と、エントリーされたら全員が走るような気持ちで臨めたらいいねと話した」
―同時の花崎選手、佃選手も好走し、今回3年生が大きく優勝に貢献したと思うが
「花尾や山野も自分より持ちタイムが速く期待をしていたが、少し苦しい走りになってしまったのをカバーできていたのが3年生だった。山野からタスキをもらうときも3分19秒あり、優勝したいという気持ちと厳しいかもという思いもあったなかで区間賞を取るという攻めの走りをした。3年生が頑張っていたので、自分も花崎みたいに区間賞を取ったりとか、3年生にも負けないような走りをしようと思った」
―前回と同じ10区を任されたが
「去年に悔しい思いをして、監督からは10区以外を走るかもしれないという話はされていたが最終的に10区を言われて、その悔しい思いをリベンジするためにしっかり走ろうと思った」
―当日の調子は
「1週間前に調子が良くて、上がり過ぎてもピーキングが合わないので1回落としたが、そうしたらあまり調子が上がらなくなってしまったのが4日前くらい。直前で尻上がりになり、当日のアップなどで動いた感覚では悪くないなという感じだった」
―レース前、監督からはどのような指示が
「2位は確実に取りにいくし、お前が区間賞を取るような攻めの走りをしないとだめだぞと言われた」
―運営管理車の監督からはどのような声をかけられたか
「15㎞くらいで中継車が見えて、そのあたりで監督が『前見えたぞ』と言ってくれた。また『もっと攻めた走りしないと区間賞の走りはできないぞ』とか。20㎞くらいで『男だろ』と言われて、自分もスイッチが入って攻めた走りができた結果逆転できた。ラストで、自分は言われたことがなかった『男になったね、やったねやったね』と言われて、褒められたというか、嬉しかった。げきの中でも初めてのもの、去年とは違うものを感じることができた」
―給水の選手は
「10㎞地点が江口(大雅・仏4)さんで、15㎞地点が伊東(颯汰・営4)さんだった。江口さんからは前後との間隔を言ってもらって、頑張れと言われた。伊東さんからは、前との差が詰まっているから、体も動いているからこのままなら行けるぞと言われた。伊東さんはメンバーに入っていたり合宿にも一緒に行ったりしていて仲が良いので、15㎞でもし自分がきつくなっていたら元気になれるだろうなといったプラスのことを考えて、伊東さんを15km地点にしてもらった」
―いつ逆転できる、できそうと思ったか
「確実にいけると思ったのは20㎞地点。コの字に1㎞ずつという形になるが、その地点で捉えたなと思った。後ろについて相手の様子をうかがってから一気に行って、そこでついて来なかったのでこれはいったかなと。もちろんまだ2㎞も余っていたので油断はしないで最後まで行って、最後には喜びが出て、走りながら笑ったりもした」
―優勝のゴールテープを切った感想は
「みんながつないできたタスキであったり、4年生も1人しか出られなくて悔しい気持ちがあったり、監督もなかなか優勝できないと頭を悩ませていたなかで全日本で優勝できて箱根も優勝したいと思ったり、コロナウイルスで練習を学校の方にも協力してもらったりなど、色々な人の思いや感謝などがつまったものだった。最後に神戸さんと小島さんが迎えに来てくれて、去年恩返しができなかった分今年恩返しができたかなと思う。気持ちも嬉しさや喜びとか、泣いてしまったりなどあふれてきたものがあった」
―区間賞を獲得したが
「もちろん箱根で区間賞を取れるのはすごいことで、それだけ自分は強くなれたというか。去年は7位で区間賞にはほど遠かったが、それをしっかり1年で立て直しできたのが本当に嬉しかった」
―雑誌の表紙や新聞の1面が石川選手だらけになったが
「びっくりした。あんなになるとは思わなかった。写真は結構撮られたが、そんなにどーんとなるとは思わなかった。次の日の取材の待機所に新聞が全部置いてあって、全部自分の顔が写っていてちょっと恥ずかしいなと思った」
―1つ下の田澤選手が主将となったが
「それには監督の意図があったりとか、自分たちの学年の力の弱さだったりがあって、下の学年に任せてしまうのは申し訳ない、悔しい気持ちはもちろんあるが、それだけ田澤が強くてチームをまとめてくれる。田澤自身もこれから日本代表になったり、自覚を持たないといけなかったり、エースとしてしっかり自分だけでなくチームも見てくれたら、今年より一層強くなるのではと思う。もちろん自分たちもサポートしながら、一緒にチーム全体でまた出雲、全日本、箱根と勝って三冠や、連覇をできるようにしたい」
―最終学年となるが、今後の意気込みを
「最終学年になって、今までこつこつ積み上げてきた練習や色々経験したことを後輩に伝えるのも大事な役目だと思う。監督にも育ててもらったので恩返しできるように、1回の優勝だけでなくて連覇であったりとか。これを継続していく、維持していくことが難しいと思うので、それを途絶えさせないようにしたい。今までなし得たことがないこと、前代未聞な記録を作っていける最初の世代にしていきたいかなと思う」

※1月18日に発行したコマスポ号外でも、こちらの3年生3名について取り上げております。あわせてご覧ください。

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