• 駒大には本当に体操が好きな選手が集まっている。そのことを「誇りに思う」と三幣晴三総監督は話す。=駒大体育科研究室で(岩田陽一撮影)

『ジュニアの選手たちからあこがれられるような選手になれ』

[体操競技部]三幣晴三総監督に聞く今までとこれから(2003年03月03日 00時00分)

昭和41年に創部された体操競技部。発足当初は部員わずか6人ほどからのスタートだった。今では約40人にのぼり、年々着実に力を付けて来ている。それをずっと見守り続けている人がいる。三幣晴三総監督だ。
設備も整っていない環境で一から指導してきた三幣総監督。体操競技部に対する思いなどについてインタビューした。

「体育の教員として駒大へ」
 東京教育大学(現・筑波大学)の体操競技部で、肩を痛めて現役を引退するまでオリンピックを目標に練習していた。駒大に勤め始めたのが昭和39年。仏教、禅の世界はスポーツの世界に通じるものがあったしね。その時、駒大の保健体育主任が私の研究分野の先輩だったこともあって、体育原理の教員が一人欲しいと言われた。だから、最初から駒大に体操競技部を作って欲しいという要請はなかったね。
「ある学生達との出会い」
 昭和41年の時だったかな。駒大の学生で体操が好きなやつらがいて、顧問になってほしいと言われた。でも、その頃は東京教育大学の体操部のコーチをしていて、結局、そこで10年間コーチをやってしまった。将来は(駒大体操の)コーチをやりたかったし、自分の将来のためにも東京教育大学の方を見させてもらっていたんだ。当時駒大の人からは、なぜ駒大ではなく東京教育大学を見ているのかと不思議がられていたし、おかしい奴だと思われていたね(笑)。
 でも、その顧問になってくれと頼みにきたやつらが、体育館の片隅で練習しているのを見てね。やっぱり体操が好きなんだなと思った。月に1,2回しか見てやれないという前提でコーチを引き受けた。それで昭和41年に体操競技部が出来ることになった。この中に現OB会長の大司正人氏もいたわけです。
 最初のメンバーは5~6人だったかな。練習もマットしかない。しかも体育館の片隅でね、バレーボールやバスケットボールが飛び交っているなかでね。体育の授業で使うという事で器具はナントか揃えてもらったけれど。その後、昭和51年くらいに筑波の方は加藤澤男さんという人(彼は私のコーチ時代にオリンピックで個人総合優勝を2度も獲得した名選手で世界のスーパースターだった男だけどね)がコーチになったので完全に駒大に専念できることになったわけだね。
「たくさんの人に支えられている」
 それからは競技のレベルを上げ、インカレなどに出場して、スポーツ推薦枠をもらうことができた。今ではスポーツ推薦を取ってから17,8年くらいになるかな。玉川校舎の体育館では20年前くらいから練習しているね。それから成績が急激に良くなったね。
  駒大の現理事長の池野秀一氏には部の創設以来から合宿などにも参加していただき、最近では男子のユニフォームの提供などひとかたならぬお世話になっている。また現体操競技部部長の百済勇外国語部教授には、試験監督の部屋が一緒だったというちょっとした縁から意気投合して長い間部長になってもらい選手たちへの精神的支柱になって頂いてる。今年の(編注:インタビューを行ったのは\'02年です)アメリカ・カナダ遠征にも同行していただき大いに部員に影響を与えてくれている。
「逆境をバネに」
 今の問題は設備。はっきり言って駒大の設備は同じ競技レベルの大学では最低だね。練習場所は体育館の三分の一。「ゆか」がないのでその練習も出来ない。試合になっても変な方向になってしまうこともある。今では民間のスポーツクラブでも当たり前になっている「ピット」(これは危険をさけるための砂場のような設備だけど)、これすら持っていないというとで、恥ずかしい事ながら地方の高校に行って練習させてもらったりもするね。
  でも、その代わり恵まれないことをバネにしていく強さを駒大はもっているよね。駒大は途中で部を辞めていく人はほとんどいないね。これだけは誇りに思っていい。みんな体操が好きな奴が集まってきているのだと思うよ。
  けがをしないでいい選手になるのは難しい。試合に勝つために練習しているのでけがをするのは仕方がないこと。でもその戦いに慣れないとダメだね。伸びるタイプと、だめになるタイプ。どちらかに分かれると思う。けがをしている間にその個所を使わない練習をするとか考えを転換させることによってがんばれる。
  そして、それをバネにしなければならない。名選手達は必ずこういう経験をしているのはどのスポーツ分野でもおそらく同じだとおもうよ。これは自分の人生においてもすごいプラスになることだし、いい経験になると思う。
「ある程度の自主性に任せて」
 ある程度のノルマは与える。残った時間は選手の自主性に任せる。これが指導方針だね。上下関係はあってないようなものでごく自然にやっている。掃除も今までは1年生だけがやっていたが去年から全員がやっている。それによって時間の節約もできるしね。
  選手にとって一番楽しいのは技を覚えること。でも、自由にやらせれば選手が勝手にやる。安定してなければ試合には使えない。でも基本だけやっていても本人が面白くない。そのバランスが一番難しいところだね。
  人間は心を持っているからそれを判断するのが難しい。技術的にはできると思うが心の面でまだ未熟なところもあったりするしね。体育館で一番興味があることは、選手個々の表情が毎日変化することを観察することだね。どの分野でも指導する者にとって大事なことは、指導者自身が自分の生き生きした場所をもっていなければならないということだと思う。体操以外にも興味を持ち続けていることが大切なことだと思うよ。たとえば美しいものに興味をもったり、何かに感動したりするような人間であるべきだと思うよ。
「選手達に向けて」
 選手には常々、ジュニアの選手たちからあこがれられるような選手になれと言っている。そのためにも体操選手としてだけじゃなく、人間としても生きていく上で活き活きしていなくてはダメだと思うよ。体操だけの選手になるなと言いたい。

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