• 高校時代の先輩で、駒大で野球を続けるきっかけにもなった谷本に声をかける森田(写真右)=明治神宮球場で(篠原由之撮影)

  • 昨年も学生コーチとして、チームを支え続けた森田(写真一番左)

  • ナインをベンチに迎え入れる森田

  • 昨年から試合前のベンチ前ノックも打っている森田

森田「自分がなんとかしたい」 ~学生チーフコーチ森田インタビュー~

[硬式野球部] (2021年04月27日 07時55分)

2年ぶりに迎えた春の東都リーグ戦。スタンドで試合の取材をしている際、「今年の駒大の雰囲気がこれまでと違う」といった声をよく耳にするようになった。

そこには、縁の下の力持ちとしてチームを支え続けている、学生チーフコーチの森田遥輝(仏4)の見えない努力があった。森田に自身の野球人生についてや駒大の学生コーチについて、今年のチームについて聞いた。(聞き手:篠原由之)


―大学でも野球を続けようと思ったきっかけは
「高校時代、兄2人が京都外大西にいて、(京都)外大西で甲子園に行くという強い思いがあり、高いモチベーションを持ってやることができていた。ただ、大学野球というところを見ていなかったので、高校の監督に相談したところ『お前は大学でも続けた方がいい』と話をいただいた。それを受けて、自分でも考えて、親とも話をしている時に、高校の監督がOBの駒澤大学はどうかという話をいただいた。正直、野球のレベルも高くて、行きたくても行けないようなところで、そこでやらせてもらえることに感謝しないといけないと思った。また、高校時代の先輩である、島田一樹(18年卒)さんや谷本大晟(20年卒)さん、緒方理貢さん(20年卒)もいたので、来いよと声をかけてもらって、高校の監督にも、『お前と谷本、緒方でなんとか駒澤を1部で勝てるチームにしてこい』とお話をもらって、自分がなんとかしたいと思ったのがきっかけ。正直、選手として駒澤でやれるとは思ってなかったので、選手でいる時期はスタメンを目指してがむしゃらにやっていたが、ゆくゆくはこういう立場になってやるのだろうなというビジョンはあったので、少しずつ準備はしていた」

―学生コーチに転身するきっかけは
「一番初めは、自分が1年生の頃、4年生が引退したタイミングで監督から学生コーチ転身の話を貰った。だが、当時の駒大は4年生でメンバーではない人が学生コーチを務めるというのが主流だったので、正直、びっくりしたというか、まさか一年生で声をかけられるとはと思った。ゆくゆくは学生コーチになるのだろうというビジョンはあったが、あまりにも早すぎてびっくりしたというのが正直なところだった。また、地元の京都を離れて東京の大学に通わせてもらっている親のことも頭にあったので、このタイミングでなっていいものかという悩みがあって、その時は一度お断りさせていただいた。その約一年後、2年の冬に再度話を貰って、迷っていた自分もいたが、親などとも話をして背中を押してもらったし、監督さんからの話もそういう立場としての自分を求めてくれているという思いが伝わってきた。さらに、自分自身も選手でいるより、そういう立場でいた方が駒澤大学にとって自分がうまく回れると思ったのがきっかけ」

―駒大の学生コーチについて
「自分が学生コーチになった当時、学生コーチが10人以上いたが、役割分担などが曖昧で全員が動いているかと言われればそうではなかった。一学生コーチとして、その現状を変えないといけないと感じて、新チームになってから一人一人に役職をつけた。今は全体で11人(学生コーチが)いるが、データや各ポジションの担当、グランド管理など一人一人に責任を持たせた。全体的なところで学生コーチの活動は何かといえば、選手や練習メニューの管理などをしている」

―学生コーチをやっていて大変だと感じたことは
「今年はさまざまな方のサポートを受けて、野球部自体が変わった一年だった。これまでの部則等を変えるにあたっては、これまでの部則で長くやってきた上の学年であればあるほど不満に思う選手も少なくなくて、同期と言い合うことも少なくなかった。同期に情が芽生えつつも学生コーチという立場上チーム全体を見ないといけない。全員がチームの一員である以上、全員がチームの部則に則るということをチームの全員に理解してもらうのに、はじめは非常に苦労した。また、そういうことを言う立場である以上、自分自身ができていないといけない。さらに、自分自身が周りに比べて野球が上手くないので、私生活など技術面ではないところで裏表がないように毎日意識して過ごしている」

―学生コーチのやりがいを感じるときは
「今年は大学関係者の方やOBの方だけでなく、駒大の野球部について詳しくない方などからも『今年の駒澤は変わったね』と声を掛けていただけている。そういうところはやってきてよかったなととてもやりがいを感じる」

―これまで順風満帆な野球人生ではなかったとは思うが、野球部を辞めたいと思ったことはあるか
「小学校、中学校、高校、大学の野球人生振り返って一度もない」

―それはなぜだと思うか
「厳しい世界ということを前提に受け入れてきたということがある。また、経済的に決して裕福ではない家庭にも関わらず、三男の自分も兄と同じく大学まで野球を続けさせてもらって、さらに京都から上京して寮生活までさせてもらって、そこまでのサポートを親にしてもらっているにも関わらず、簡単に辞められないというか、辞めるという感覚になれなかった」

―月岡大成(法3)や仁和龍生(経4)らと共にベンチを率先して盛り上げているが
「月岡や仁和らはスタメンではないし、自分自身も選手ではない以上できることが限られている。チームのためにできることをやるしかないよねというのが第一のところ。また、去年のチームは個々の能力が非常に高いチームで、個々の力で戦っているという感覚があった。去年も優勝を狙えるだろうという目論見から結局は最下位という結果に終わり、個人では勝てないという認識から始まった。去年から戦力が劣る中で、東都1部をどう戦っていくかという話になったときに、スタメンの10人だけでは戦えない、そんなに甘くはない世界だと思っていた。そこで、口うるさく、スタメンの10人だけでなくベンチの25人、そして試合前日、当日のミーティングでは『25人だけでなく、124人の部員全員で駒澤は戦うぞ』ということを伝えている。だからこそ、ベンチに入れている25人のメンバーは(声を)出さないといけないというよりは、当たり前に(声を)出しているという感覚だと思う」

―学生コーチがランナーコーチを務めるのが珍しい駒大で、3年生からランナーコーチを務めている。ランナーコーチを務めるようになったきっかけは
「2年生の選手時代、自分自身がメンバーでも全然ない頃に、オープン戦へバスが出発する直前に監督に『今日A(チーム)入れ』と言われて、何の前触れもなく一度だけA(チーム)の試合でランナーコーチャーをさせていただいて、その後、選手時代はなかったが、学生コーチに転身した時のオープン戦で、また監督に『ランナーコーチは入れ』と言っていただいて、以降ランナーコーチを務めるようになった」

―駒大は京都外大西出身の部員がランナーコーチを務めるケースが多い傾向にあるが
「ランナーコーチは監督の信頼があるというか、多少野球を知っている選手や見る目がある選手が入る。外大西自体が野球の知識、野球を見る目が高い高校であることに加えて、監督も駒大で野球をやられていた方であることから、外大西の野球自体が駒大の野球に似ているところもあって、やりやすいというところがある」

―監督や林コーチと信頼関係を築くためにしていること
「何百人、何千人と人と関わってきて、多くの野球選手を見られてきた方なので、取り繕っている姿だと見抜かれる。心の芯を見られる方々なので、だからこそ、何をするというより、変に表裏をつくっている姿だと、本当に信頼されるところまでは厳しい。根本的なところからというかガラッと自分自身を変えるくらいでないと、本当に信頼されるところまでは難しいと感じている」

―学生チーフコーチになった時に、監督や林コーチからかけられた言葉はあるか
「自分が3年の時から野球の話はしていた。選手からの声があってチーフコーチに選ばれて、新幹部と共に集められた際には、『それぞれ自覚を持って、できることをやりなさい』と言われた。良くも悪くも責任がつきまとうある立場になるとは思うので、『何かガラッと変えろというわけではなくて、一個一個より良くしていけばいいよ』というような、気楽にやらせてもらえるような声をかけていただいた」

―これまで駒大でやってきて、一番印象に残っているチームや選手、シーンはあるか
「自分が1年生の頃の4年生のチーム。あのチームは本当にびっくりした。優勝決定戦で負けてしまったが、すごい方々がたくさんおられた。そこには、それなりの練習の雰囲気があって、また、選手以外の学生コーチなども本当によく機能していて、当時の新垣コーチが介入する場がないほど、選手や学生がどんどん野球のことについて話していて、だから強かったのだなと、強さの理由を知ったチームだった。今年はチームを変えるにあたって、良い見本があったので、そこを目指していこうということになって、監督やコーチも学生主体でチームを作ることを後押しして下さっている。」

―森田学生コーチにとって、良いチームとは
「これまでのチームが三者三様というか、全然違うチームスタイルだった。結果だけ見てというわけではないが、練習中に活気があるというか、ただワイワイしているだけではなくて、悪いプレーには悪いと誰に対してもどの選手も言えるチーム。極論を言えば、4年生に対して1年生が言えるような環境というか、選手同士で言えないと、いくら監督やコーチ、学生コーチが言ったとしても、神宮でプレーをするのは選手なので。それ(悪いプレー)をチームとして許さずに言い合えるというのが強くて、良いチームなのかと思う。今はなかなか結果が出なくて、選手達も困惑しているところではあるが、チームとして向いている方向は間違っていないというのは認識しているし、監督やコーチも言ってくださっている。全員が野球に入り込めるようなチームではないと良いチームとは言えないと思う」

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